『仮面ライダー響鬼』の30話における制作側の体制変更以降、大きく変わってしまった作風に対して様々な議論がなされているが、参照できるデータを可能な範囲で使、結局何がどうなったのかっていう辺をチョッピリ考えてみたい。
記載されたデータはネット中心に集めたもので、おそらく正しいデータだと思うけど信憑性の保証はないので注意のこと。
ということで、まず、響鬼という番組が登場するに至る、クウガ以降の視聴率についてのデータから。
データは順番に通年の全話平均視聴率、最高視聴率、最低視聴率、初回視聴率、最終回視聴率、1話から5話までの平均視聴率、最終話までの終盤5話の視聴率、1話から29話までの視聴率、30話から最終話までの視聴率の9種のデータと、最初5話と最後5話の平均値の差、29話までの平均値と29話以降の平均値の差を表している。
クウガ
平均09.7%
最高11.8% 最低07.2%
初回08.9% 最終回11.8%
スタート5話平均09.7% ラスト5話平均09.5%(-0.2%)
29話まで平均09.0% 29話以降平均10.4%(+1.4%)
アギト
平均11.7%
最高13.9% 最低09.1%
初回11.7% 最終回12.8%
スタート5話平均11.5% ラスト5話平均11.2%(-0.3%)
29話まで平均11.4% 29話以降平均11.5%(+0.1%)
龍騎
平均09.4%
最高12.9% 最低06.7%
初回11.5% 最終回09.8%
スタート5話平均11.5% ラスト5話平均08.3%(-3.2%)
29話まで平均09.7% 29話以降平均09.1%(-0.6%)
555
平均09.3%
最高11.6% 最低06.4%
初回10.5% 最終回09.5%
スタート5話平均09.1% ラスト5話平均08.5%(-0.6%)
29話まで平均09.4% 29話以降平均09.2%(-0.2%)
剣
平均07.9%
最高10.0% 最低05.0%
初回10.0% 最終回09.1%
スタート5話平均09.6% ラスト5話平均06.7%(-2.9%)
29話まで平均08.7% 29話以降平均07.1%(-1.6%)
響鬼(43話まで)
平均08.1%
最高10.0% 最低06.2%
初回07.3% 最終回??.?%
スタート5話平均07.3% ラスト5話平均??.?%
29話まで平均08.0% 29話以降平均08.7%(+0.7%)
◎1話から5話までの平均視聴率はその番組に対する開始前からある期待値
……ただし前番組の盛り上がりにだいぶ左右されるので絶対値としては考えられない。むしろ、前番組の終盤5話との関係性が重要。
……最大の上昇はクウガ→アギトの2%、次が555→剣の1.1%。
◎最終話までの終盤5話の視聴率は固定視聴者に提供できた最終的な番組の質
……最終話近くから見始める人は少ない、と考えると、元々見ていた人を最後まで繋ぎとめることができたかの参考になる。ただし、年末年始は視聴率が上がり難い傾向があるので判断が難しい。
◎1話から5話までの平均視聴率と1話から29話までの視聴率の差は、番組に対する当初の期待値と実際に視聴してみた後の満足度の変化
→上がれば期待していたより面白かった、下がれば思ったより面白くなかった。上げているのは555と響鬼、下げているのは龍騎と剣。
◎29話までと29話以降の差は年間を通した視聴者の満足度の変化(最後まで楽しめたか)
……つまらなければ視聴者が離れ、あまり変わらなかったり上がっていれば視聴者の満足度が高いと仮定できる。上がっているのはクウガ、アギト、響鬼、下げているのは他3つ。特にクウガの上昇(+1.4)、剣の下落(-1.6)が目立つ。全体を通して考えると、龍騎→555と徐々に関心が薄れていき、剣の序盤以降、多くの視聴者が番組を離れたしまっている。
尚、1年分、約50話のど真ん中ではない29話で前と後を分けたのには大きな意味はない。響鬼の変更前・後の参考になるということの他、30話過ぎに最強フォームと番組的な起承転結の転にあたる部分、第三勢力(アナザーアギトや天王寺理事長等)の登場などがくるため、完全な半分で割るよりも前後半を判断しやすいんじゃないかとも思うが、根拠も意味もあまりない。あくまでも便宜上ということで。
上記のデータから読みとれるのは、クウガが序盤よりも後半に大きく視聴率を上げている点、アギトが通期でほぼ全く同じ高い視聴率を獲得している点、龍騎の終盤5話で異常に視聴率が下がっている点、龍騎以降、剣までの3作品で序盤と比較して後半に視聴率を下げている点、響鬼で(現時点で)前作剣の平均値を上回っている点など。
ひとつずつ見ていくと、平成ライダーの1作品目として後の作品の基盤となったクウガは、29話前と後で1.4%も視聴率を上げている。これはドラマの内容が視聴者の期待値を上回り、新規視聴者の定着率が高かったケースで、次作アギトに大きな追い風になった。
平成ライダーで最高の視聴率を上げたアギトは、初回、最終回、各種平均ともおしなべて高く、期待値を裏切ることなく年間を通して視聴者の関心をキープし続けていたことがわかる。ラスト5話の超展開等、内容的な賛否はあったものの、番組的に絶対的な成功を収めたのは確かだ。
逆に、後に続く視聴率下降路線の始点になってしまったのが龍騎。初回11.5%とアギトの大成功から高い期待値を確保するが、1話からの5話平均11.5%と順調な滑り出しをしたものの29話平均では9.7%と1.8%もポイントを落とし、更に終盤5話平均では8.3%と、1話から5話平均と比較して3.2%の大幅な下落を見せている。イケメン路線、大量のライダー、様々な謎と、アギトの長所を拡張した路線自体が既にインパクトにならなかったこと、複雑且つ暗いストーリーが子供に受け入れられなかった点などが理由だと思われ、最終回に関して「意味がわからない」と苦情が殺到する等、制作側の思惑と視聴者の期待がズレ始めたことを伺わせる。
龍騎の反省を踏まえ(たかどうかはしらないが)、制作サイドがライダーの孤独を描くという“原点回帰”をうたった555でも、やはり視聴者離れを食い止めることはできなかった。スタイリッシュなライダーや敵のデザイン、数々の謎や刻々と変化する状況や人間関係等、アギト・龍騎と続いた平成ライダーシリーズの王道的なストーリーであったものの、人間関係が変化し過ぎて誰が敵で誰が味方かわからない、正義の味方であるはずのライダーの倫理観が欠如しているのが受け入れがたい等否定的な意見も目立ち、やはり物語が盛り上がるはずの終盤で大きく視聴率を下げている。
剣に関しては、龍騎や555と同様の否定的な意見に合わせ、若手俳優の演技が稚拙だったことも足を引っ張った感が否めない。視聴率的にも特筆すべき点はなく、龍騎から始まった下落傾向に歯止めをかけることは出来ず、アギトと比較して通年平均で-3.8%の下落、つまり視聴率はほぼ3分の2になってしまった。
アギトの終盤に序盤の謎がかなりウヤムヤにされたことでのストーリー上の謎解きに対する興味が低下し、龍騎で13人のライダーを出した時点で拡張路線が上限に達し、ライダー同士が戦い合い正義と悪の定義が曖昧、という世界観的なわかりにくさ等、アギトで確立された平成ライダー式展開はアギトのすぐ後、龍騎の後半時点で既に新鮮味を失いつつあったのだ。
響鬼のキーワードである“完全新生”はこうした状況の中から生まれた。“原点回帰”をうたった555でも視聴者離れは止まらず、剣で再度チャレンジした平成ライダー式のシステムは完全に視聴者に見放された。新生の必要性はユーザー側に新しい価値観を提供したい、というポジティブな発想ではなく、このまま同じ手法でやってもじり貧になる怖さを制作サイドがネガティブに感じていたからではないだろうか。新しいライダー像を作り上げたかったのではなく、作り上げなければヤバかったのだ。
で、響鬼という番組についてだが、現時点での通年平均視聴率は前作剣の7.9%を微妙に上回る8.1%。このまま終われば4年ぶりに下げ止まったという意味での一応の評価はされると思われる。
まぁ0.2%の差は作品的な評価というよりは誤差の範囲でしかないし、クウガの初回が8.9%だったことも考えると、要するにこの時間帯で似たようなクオリティの作品を提供し続けた場合に想定される視聴率、仮面ライダーという番組に対する潜在的な期待値がこんなもん(7から9%程度)なのかなー、っていうことな気も。
ただし、1話から5話平均と29話まで平均を比較した場合に+になっているのは555と響鬼しかなく、響鬼は全作品中最高の0.7%の上昇。低い方が上がり易いという意味も含めて剣がひどすぎたという点を考慮しても、序盤の内容が当初の期待を上回っていたと考えられる。3年続いた下落傾向の後、響鬼でスタート5話平均→序盤29話平均(+0.7%)、前半29話平均→後半現時点平均(+0.7%)と通年で上昇している点は、傾向として視聴者の満足度を確保し支持を得ている、と受け取っていいのではないだろうか。
29話までに関しては、一応のところ“完全新生”をうたった大幅な路線変更は好意的に評価されたといえるだろう。
また、響鬼の29話以降平均が更に+になっている部分も興味深いのだが、毎年この時期は最強フォームの登場等でそもそも期待値が高いため、最終的にどうなるかは正直よくわからない。
参考までに30話以降の視聴率をあげておくと、第30話…9.0% 第31話…8.9% 第32話…8.1% 第33話…7.6% 第34話…9.7% 第35話…10.0% 第36話…9.4% 第37話…8.4% 第38話…9.6% 第39話…8.8% 第40話…7.9% 第41話…8.2% 第42話…7.1% 第43話…7.9%。更なる路線変更が受け入れられて徐々に上がっているというよりは、やはり時期に上がった後、通期平均に戻ってきている印象だ。
ちなみに、大きなお友達が番組に対して数字的にどれくらいの影響力を持っているかについて、参考までに響鬼の年代別視聴率のデータを挙げておく。
11/27放映 四十一之巻 「目醒める師弟」の年齢別視聴率
平均 8.2%
4~12才 10.4%
13~19才 5.6%
男性20才以上 2.5%
男性20~34才 4.3%
男性35~49才 4.7%
男性50才以上 0.1%
男性20代 4.2%
男性30代 5.2%
男性40代 4.0%
女性20才以上 2.7%
女性20~34才 3.0%
女性35~49才 6.3%
女性50才以上 0.7%
女性20代 2.4%
女性30代 5.5%
女性40代 5.6%
これをみると、俗に言う大きなお友達世代(男性20から34歳)というのは、そういう層でない一般の父親も含まれることを考えると実際には全然多くないことがわかる。
それよりも母親世代となる女性35から49歳の方が圧倒的に多い訳で、制作サイドがイケメン路線にこだわる理由もなんとなく見て取れるのではないだろうか。
次に、ある意味視聴率よりも重要といえるおもちゃの売り上げに関するデータが以下の通り。
クウガ
おもちゃ売り上げ(通期)118億円
参考:同年タイムレンジャーおもちゃ売り上げ(通期)64億円
アギト
おもちゃ売り上げ(通期)94億円
参考:同年ガオレンジャーおもちゃ売り上げ(通期)110億円
龍騎
おもちゃ売り上げ(通期)139億円
参考:同年ハリケンジャーおもちゃ売り上げ(通期)131億円
555
おもちゃ売り上げ(通期)120億円
参考:同年アバレンジャーおもちゃ売り上げ(通期)130億円
剣
おもちゃ売り上げ(通期)79億円
参考:同年デカレンジャーおもちゃ売り上げ(通期)116億円
響鬼
おもちゃ売り上げ(半期)30億円 ※通期予想65億円
参考:同年マジレンジャーおもちゃ売り上げ(半期)63億円 ※通期予想120億円
剣と響鬼、特に響鬼の猛烈な落ち込みが見て取れる。剣の方は、馴染みのある要素にちなみ(聖闘士星矢の星座、ジョジョのタロットカード等、既存のルールにちなんだ設定はユーザーに受け入れられ易くよく当たるジンクスがある)カード化したことなど、おもちゃ自体はよく出来ていたように思うのに、それでも大幅に売り上げが落ち込むというのは手厳しく、視聴率から考えて番組自体に関心を持ってもらえなかった可能性が否定できない。視聴率同様、少子化の影響も0ではないだろうが、同年の戦隊ものがほぼ一定の額をキープしているところをみると、やはり単純に関連する商品が売れていないということに尽きる。
響鬼に関しては、剣より更に落ち、他のライダーの半分程度と大惨敗。主力商品であるDX音撃棒の不振が響いているらしいのだが、これは商品の企画時点でのミスだろう。というのも、いわゆる“なりきり玩具”と呼ばれる変身アイテムの中で、響鬼のみベルト自体に変身機能を持たないのだ。
同じ構造で複数のライダーをコンパチできた上、コレクション性の高いカード玩具を組み合わせた龍騎、子供が喜ぶ携帯に変身機能を持たせてベルトに組み合わせた(バンダイのアンケートで子供が欲しいグッズのNo.1は常に携帯電話)555などと比較し、ベルト単体で変身の真似ができない、変身アイテムは別に買わなければいけない、買ったところで組み合わせて遊ぶギミックは特にない、変身アイテムである音叉に子供の心を惹く工夫がない等、音撃という斬新なアイデアを劇中の攻撃にのみ特化してしまったせいで、子供の最大の関心事である“変身の再現性”をベルトに持たせなかったのが敗因だろう。
5%、10%はともかく、売り上げ好調時と比較して50%以下という数字は、さすがにバンダイ的にも相当厳しかったと思われる。
さて、年間の視聴率推移、年代別視聴率、おもちゃの売り上げとデータを見てきて、実際にはおもちゃが相当に売れなかったという以外、明確な何かを見出すことはできなかったりするのだが、なんとなく浮かび上がってくるのは途中にも書いたように平成ライダーシリーズが既に“飽きられつつある”という点だ。
複数のライダーの登場、後半のパワーアップ、複雑な人間関係、ストーリー的な謎等、インパクトを重視したアギト以降脈々と続く平成ライダー的手法は、既に全てが“そういうもの”として捉えられ、視聴の動機にならなくなってきている。インパクトを重視する手法の最大のネックは、衝撃は与えられ続けることができない点。非常に厳しいことだが、様々な要素を詰め込み続けたせいで、制作サイドが必死に色んなアイデアを練ろうとも視聴者の心に響きにくくなってきているのだろう。
逆に、完全新生たる響鬼はインパクトを重視せず細かい描写を積み重ねることでストーリーがゆっくりと進行していった。これはいつも通りのインパクトを期待する既存の層には物足りなく見えた反面、インパクト云々に慣れてしまっていた視聴者には新鮮だったのかもしれない。インパクトの無さが逆説的なインパクトだったのだとしたら、構成的には皮肉なことだ。
そこへきての30話以降の大幅な路線変更。細部の描写や整合性を犠牲にしつつもストーリーはテンポよく進み、響鬼は良くも悪くも平成ライダーの定番的スタイルに変更された。
響鬼の前後半問題に関しては、前半のプロデューサーである高寺氏と、後半を引き継いだ白倉プロデューサー&脚本家の井上氏、という対立の図式で優劣をもって語られがちだが、個人的に問題の本質は誰のやり方や能力がどう、という話ではないと思っている。確かに、白倉氏や井上氏と高寺氏では仕事の仕方も物事のプライオリティも全く違い、商業としての成立を重視する前者、作品としての成立を重視する後者という印象を受ける。故にバトンタッチによって作品性という辺りで何かが失われたと感じた視聴者も多い。しかし、前半響鬼は高寺氏1人が作ったものではないし、後半響鬼も白倉氏・井上氏が2人で作っているものではないのだ。
単純な問題として、仮に高寺氏降板の理由が噂されている通りに慢性的なスケジュールの遅延と予算配分の不適正さ(使い過ぎ)であったとしても、制作サイドにはスケジュールや予算を調整したり、上手くいっていない部分をフォローし調整する人間はいないのかと問いたい。
前半支持者が言うように後半響鬼の脚本が大雑把であったとしても、あきら変身体のベルトに音撃鳴がついていたり轟鬼がラッパ族担のウブメを追っていたことなどは、全て脚本家やプロデューサーの責任だとは思えない。鬼登録前の変身体には音撃装備はないですよと言うヤツや、前後半の間を取り持って整合性を取ろうと意識するスタッフがいなかったっていう。
要するに、響鬼前後半問題で露呈したのは、特定のスタッフの個人的な資質どうこうではなく全てを内包した制作サイドの限界だ。
東映が抱えている計算できるスタッフである白倉氏や井上氏を起用すれば、予算や納期はある程度綺麗に収まるが視聴者に新しい価値観をできる可能性は低い。それはここ数年の平成ライダーの視聴率が証明している。どんな設定やストーリーにしようがいつも通りのテンポとインパクトを重視した(結果瞬間移動したり根拠が曖昧な言動が増えてしまう)番組となり、逆に丁寧に今までにないものを作ろうと高寺氏を起用すれば、丁寧に作り過ぎて納期は間に合わず予算は大幅にオーバーし収拾が付かなくなる。
両者の真ん中や第3の選択肢はないのだろうか。
あくまでも個人的な印象だが、井上脚本の最大の欠点は「どうせ子供が見るものなんだしこんなもんだろ」っていう書き手自身のクオリティに対する意識の低さだと感じる。子供番組である以上、大人の視聴に耐えることを意識し過ぎる必要はないと思うが、娯楽が多様化し受け手の目が肥えてきている昨今、作り手に“イイモノを作ろう”というこだわりがないものが視聴者の心に響くとは思えない。
その辺りが、商業として破綻はしたものの少なくとも作り手のこだわりは感じた前半響鬼を好んでいた人たちが、どうしても後半響鬼を受け入れられない理由ではないだろうか。
来年のライダーを誰が作るのかはわからないが、響鬼で示した制作サイド全体の構造的な問題や限界点を見るに今後とも今まで通りのものは見れても今まで以上のものは見れないんだろうと思う。それでオッケーな人は見ればいいし、そうじゃない人はストレスが溜まるからブーブー言ってないでもう見ない方がいいんのかもしれんね。


